「日本人記者? ここから先、外国人は立ち入り禁止だ」
パキスタン北西部の町ハングで、政府軍による武装勢力掃討作戦が始まった直後の今月21日、ハングの手前約5キロの治安部隊の検問所。記者が乗る乗用車の運転手に、兵士3人が自動小銃の銃口を向けて停止させ、車内とトランクを調べた後、退去を命じた。
反対車線にはハングから、東約10キロの町コハトへ逃れる避難民を乗せたトラックが通過していく。Uターンして追いかけた。避難民の一人、農業、ラシーングルさん(34)は、「軍も武装組織も町を壊し合っている」と怒りをぶちまけた。
◇ ◇ ◇
パキスタンには、アフガニスタンへ通じる3本の通商路がある。ペシャワルからとクエッタからの幹線2本。もう1本は地元住民しか使わない、ハングから国境の町パラチナルを経てアフガンに抜けるルートだ。このルートを6月下旬、ハング付近を拠点とする、タリバンに近い武装組織が占拠し、アフガンへの越境道として使い始めた。このため、パキスタン政府はハングの掃討作戦に乗り出した。
避難民によると、政府軍は武装組織を封じ込めるため通商路を封鎖。ハング付近では、武装組織が得意とするゲリラ戦を防ぐため、潜伏場所となりそうな建物を徹底的に破壊した。武装組織も軍の地上からの接近を警戒し、視界確保のため民家の壁などを壊した。
「女性や子供らの悲鳴や泣き声、建物が吹き飛ぶ爆音。戦闘は町全体をのみ込み、何も持ち出せず、羊など家畜も放置したまま避難した」。避難民は訴える。
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米国の圧力を受け、ムシャラフ政権が国境地帯で武装勢力掃討を開始した02年以降、約100万人が家を失ったとされる。政府は補償責任につながる住民被害は公表していないが、兵士の死者数については「米の同盟国の中で最多の1000人だ」(情報省高官)と、対テロ戦への「貢献ぶり」を強調する。
だが戦場で何が起きているのか、記者が実際に確かめるのは極めて困難だ。部族支配地域に入った地元記者の拉致・殺害、行方不明事件は後を絶たない。「テロとの戦い」は、闇の中で続いている。【コハトで栗田慎一】=つづく
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