「剣客商売」の秋山小兵衛にしろ、「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵にしろ、故池波正太郎の小説に出てくる主人公は実によく「心付け」をはずむ。
いうまでもなく、米国にはチップの制度がある。正直に言うと、チップを払う際に「もったいないなあ」と思うことがしばしばある。そんなときに、気前よく「心付け」をはずむ小兵衛や鬼平を思いだし、「狭い了見でいてはいけない」と自らを励ますのだ。
チップの渡し方にもちょっとしたコツがある。レストランなどでは、支払いに含めればいいが、ホテルで荷物を運んでもらったりした場合にどうやって渡すか。1ドル、2ドルのことだが、これが慣れないとなかなか難しい。
宮本輝氏が、かつて自らがホテルで働いていた経験を下敷きに、チップを渡すには「間」が大事で、下手な人はこれがわかっていないといった意味のことを書いていた記憶があるが、同感である。
いろいろ現地の人々の渡し方を観察して、ようやく自分なりの「間」を見つけた。コツは、紙幣を小さく折りたたむこと。これを、相手の目を見ながら、さりげなく差し出す。
ところが、五輪の取材をはじめカナダ出張が続いた最近、思わぬ障害に直面した。カナダには1ドル紙幣がなく、すべてコインなので、「間」が微妙にくるって、やりにくい。するとついチップを渡すのがおっくうになった。(松尾理也)
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