北朝鮮では食糧難に加え“衣”にも困っているようだ。最近、合成繊維の“ビナロン”の生産工場が完成し、金正日総書記が出席して祝賀行事が行われた。工場は「2・8ビナロン連合企業所」といい、東海岸の工業都市・咸興市にある。祝賀大会には10万人の群衆が動員され、金総書記が地方での群衆大会に出席したのは初めてだ。力の入れようがうかがわれる。
ところで“ビナロン”だが、これは石炭を原料に1939年(昭和14年)、日本で開発された。日本ではビニロンといっている。米国のナイロンに次ぐ世界で2番目の合成繊維として、京都大学工学部化学科の桜田一郎氏(1904~86年)らにより開発された。
この時、京大で桜田一郎氏と共同研究にあたったのが朝鮮半島出身の李升基氏(1905~96年)。戦後、韓国に戻りソウル大工学部長などを務めたが朝鮮戦争(50~53年)の際、北朝鮮に渡った。北朝鮮で“ビナロン”として生産を進め科学界の中心となった。桜田一郎氏とともにノーベル賞級の科学者といわれた。
北朝鮮では“ビナロン”は民族感情をくすぐられる自慢の“主体的繊維”というのだが、衣料としては質がいまいちで、経済性にも問題があり、当初の工場は16年前に閉鎖された。今回はその再稼働というのだが、日本生まれの合成繊維という意味では、70年後に北朝鮮で改めて“日本”が脚光を浴びているというわけだ。(黒田勝弘)
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2010-03-13 国際
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