「不作為は罪である」。日銀のデフレ対応を見るたびに、社会部で検察担当として薬害エイズ事件を取材していたときに検察幹部から聞いたこの言葉がよみがえってくる。非加熱血液製剤の投与を受けた血友病患者らがエイズウイルス(HIV)に感染して死亡した薬害エイズ事件では、平成8年に同製剤の回収措置などを怠ったとして元厚生省生物製剤課長が業務上過失致死で逮捕・起訴された(20年に禁固1年、執行猶予2年が確定)。事件で問われたのは官僚がやるべきことをしなかった不作為による結果責任だった。
いま日本経済を覆っているのは物価が持続的に下落していくデフレという病だ。放置すれば、企業活動が停滞し、雇用の縮小・賃金減少という形で私たちの生活も脅かされる。主治医としてこの病を治療しなければならないのは「物価の番人」である日銀だが、どうも物足りなさを感じてしまう。
多額の借金を抱えて財政余力のない政府は日銀に一段の金融緩和に踏み切るよう「口先介入」を強めている。こうした光景は何年にもわたって風物詩のように繰り返され、最終的に政府の圧力に屈する形で日銀が重い腰を上げて決着するのが常となっている。そこに垣間見えるのは「落としどころ」を探って金融緩和策を小出しにする日銀の姿だ。デフレの責任を日銀に転嫁するような政府も問題だが、日銀の姿勢がこれではデフレ病の抜本的な治療は難しい。
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